Machitabi Voices 04

ひょうごヘリテージ機構
ヘリテージマネージャー
一級建築士 藤井成計(なりかず)さん

レトロな雰囲気の中にもスタイリッシュ阪神間モダニズム建築

 レトロな雰囲気の中にもスタイリッシュな佇まいを見せる阪神間モダニズム建築。明治後期~昭和初期に花開きました。阪神間に私鉄が敷かれた時期、大阪に会社を持つ富裕層らがこぞって建てた、当時としては最先端の建築様式です。
 「阪神や阪急が通り始めて、大阪への行き来が便利になったことが大きいですね。会社社長や重役さんたちが、大阪の工場地帯ではなく郊外に住むことを選択したんです。住まいだけでなく仕事上の客人をもてなす迎賓館的な役割も持っていました」。そう話すのは「ひょうごヘリテージ機構」の藤井成計さんです。

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東の帝国ホテル、西の甲子園ホテル

同機構は兵庫県内に残る歴史的建物を発掘し、街づくりに活かす活動をすすめる組織。同機構で阪神地区に所属する藤井さんは「まちたびにしのみや」で甲子園モダニズム建築である、武庫川女子大学甲子園会館(旧甲子園ホテル)、松山大学温山記念会館(旧新田邸)や夙川モダニズム建築の夙川カトリック教会、浦邸などを巡るツアーのガイドを務めてきました。
「昭和10年代後半には太平洋戦争が激化し、ぜいたくなものは建てられなくなります。甲子園ホテルもホテルとして営業したのはわずか14年でした」
甲子園ホテルは米建築家、フランク・ロイド・ライトの弟子・遠藤新が設計。「東の帝国ホテル、西の甲子園ホテル」と称されたほど超一流ホテルで、あのベーブ・ルースも滞在したそう。帝国ホテルの支配人、林愛作が構想し、完成後は支配人となっています。
「ライト様式と呼ばれる外観は左右対称で、内部は階段や天井に高低差があるのが一つの特徴といえます。中を進んでいくうちに空間の変化が感じられ、次の場面が開けるというような、何ともいえない造りですね」。
戦後はいったん米進駐軍に接収された後、国の管理下に置かれますが、現在は武庫川女子大学甲子園会館に。同大の建築学科の学生が学びます。映画やドラマのロケ地になることも多く、昨年公開の映画「日本の一番長い日」では、昭和天皇の居室として登場しました。

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世界遺産の趣漂う

フランク・ロイド・ライトは〝近代建築の三巨匠〟と呼ばれ、三巨匠の一人、ル・コルビュジエ(1887~1965)が手掛けた国立西洋美術館が今年世界文化遺産に登録され話題になりました。
「夙川のモダニズム建築として残る浦邸は、コルビュジエの日本人の弟子・吉坂隆生が設計したものなので、今後注目されるのではないでしょうか。1階部分が柱だけのピロティ形式は、コルビュジエが唱えた近代建築五原則の一つ。今も住んでおられるので、外から見学するだけですが、カラフルなステンドグラスなど趣がありますよ」。

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建物の力に魅せられて

モダニズム建築探訪は「まちたびにしのみや」の中でも人気企画の一つです。
「建物の持つ力は大きいですね。インターネットで何でも見れる時代ですが、実際に足を運んで本物を目の当たりする経験にはかないません。登録有形文化財への登録など歴史的建物を残していくと同時に、街づくりに活かしていきたいと活動していますが、まずは、知っていただくことが大切です。『まちたび』には県外からの参加者も多く、その第一歩になるのではと思っています」。
それほど遠くない〝昔〟の建物は建築的価値と共に親しみやすさも漂っているよう。何度でも訪れたくなります。

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